広川峯啓の“笑いま専科”

広川峯啓の“笑いま専科”

2月 16日

笑いの反芻(はんすう)「『井戸のお化け』とは何だったのか?」

漫才やコントのネタを見たり、爆笑トークを聞いたりした時、大きな笑いに隠れて、ついついスルーしてしまいがちになる笑いというものが、結構あります。もちろんそれも、演者、語り手が練りに練って盛り込んだものです(たまに無意識の場合もありますが…)。

そういった、観客や視聴者が消化し切れなかった「笑いの塊」をもう一度胃袋に戻して、じっくり反芻してみようというのが、このコラムの企画意図です。まず取り上げてみたいのは、先日の「R-1ぐらんぷり」で優勝した佐久間一行が見せた、独創的ながらも幅広い層に受け入れられたネタ「井戸のお化け」について。

「♪井戸の中からじゃなくて  井戸自体がオレっさ」というフレーズが全てを表わす、呆れるくらいに明るいミュージカルナンバー。
8人中8番目の登場順だったにもかかわらず、他の出演者とも一切ネタがかぶらなかった斬新さが、観客にも審査員にも大好評でした。

4分弱の間、つねに観客の予想を裏切る展開を続け、ただただ笑っているうちにエンディングを迎えるというシンプルながらも不思議なネタ。見終わっていちばん不思議に思うのが「なぜ『井戸のお化け』なんだろう?」ということでは。

古くは「番町皿屋敷」のお菊さんから、最近では「リング」の貞子まで、井戸から出てくる幽霊は数々ありました。でも、井戸からお化けが出てくるという例は意外とないんですね。

ただ、「イドの怪物」というものなら、一部ではかなり有名な存在だったりします。もともとは1956年に公開されたSF映画「禁断の惑星」に登場した怪物で、人間の潜在意識、自我(イド)そのものが怪物化して人間を襲うというストーリーです。

当時、子供向け中心だったハリウッドSFの中にあって、心理学的なテーマを扱い、全世界のSFファンを夢中にさせました。日本でも筒井康隆、手塚治虫らが、このテーマを作品に織り込んできました。

佐久間一行がSF好きかどうかは判りませんが、「イド自体がオレっさ」っていうのは、まさにオリジナルのテーマと合致してます。そういった観点から、あのコントを見直すと、また新たな魅力を発見することができるんじゃないでしょうか。
2月 10日

品川・山里イジメ問題が電撃的和解!?

1週間前、南海キャンディーズの「山ちゃん」こと山里亮太が、ラジオで暴露した「先輩からのいじめ」告白は、もめ事好きなネットニュースが大騒ぎしたこともあり、たちまち最新の「芸能人バトルネタ」として、WEB上を駆け巡りました。

これまでの経緯は、ネット上で諸々チェックしてもらうとして(超手抜き!)、イジメの超本人と目された品川祐が、炎上したTwitterに嫌気がさし、「Twitterやめます」と宣言したとの二次報道もあり、ここ1週間盛り上がりが持続してました。

ちょうど、麻木久仁子vs大桃美代子の不倫問題も一段落し、タイミング的にも良かったんでしょう。実際問題としてTwitterはメッタなことじゃ炎上しない仕様なんですが、「話はなるたけ盛るべし!」がネットニュースの信条。当然のごとく、某巨大掲示板もお祭り状態が続いてました。

事件発生からちょうど1週間後の9日深夜。事態は劇的展開を迎えます。先週オンエアでの「告白」が巻き起こした騒動を受けて、同じラジオ番組生放送で必死に釈明していた山里の前に、サプライズで品川本人が登場!! ホンモノの「パニック!」状態に陥った山里をよそに、品川は1週間溜め込んだ思いのたけを、電波に乗せてブチまけたのでした。

内容を要約すると「確かに、あの時はヒドイことを言ったかもしれない。でもそれは、スベって落ち込んでいる山里に対する『オレなりの愛情』。イジメではなく、イジリだ」ということ。「それにしても、6年前のことを今になって言い出すんじゃねーよ」と品川が逆にツッコミ入れるなど、番組は(そして騒動も)笑いのうちに幕となりました。

こうして「品川・山里イジメ問題」は一応の決着を見ました。ここで事件を総括してみると、どちらが悪いかということではなく、お笑い芸人ならではのアイデンティティというものが、一連の騒動の中に色濃くかわっている気がします。

品川は芸人だからこそ、番組でスベった山里を手荒くイジり、そうすることで自分なりのエールを贈ったつもりでいた。山里も芸人としてのプライドを持っているからこそ、6年前にスベって傷つき、その傷に塩を塗り込んだ発言を、今も脳裏に焼き付けていた訳です。

タイプは正反対ながら、品川、山里のどちらもが芸人としての強い思いを持っていたため発生したトラブル(?)だったのでは。その点が、普遍的な男女関係のもつれである「麻木・大桃事件」と、大きく違うところなんでしょうね。ちなみに、こっちは第二幕、三幕もありそうですが(笑)。
2月 6日

ピース又吉に感性を揺さぶられよ!(質疑応答編)

又吉直樹×せきしろの第二句集『まさかジープで来るとは』のサイン&握手会が、先日、新宿の書店で開催されました。200人限定のところ、前日には定員が埋まってしまったようで、人気の高さがうかがえます。

サイン会前に行われた囲み取材に登場した又吉は、多忙なスケジュールの中、少し疲れ気味に見えました。ひょっとしたら、あれが普段の状態なのかもしれませんが(笑)。

一問一答の口調も、芸人らしいテンションではないものの、例え平凡な質問であっても、その都度しっかり考えた上で答えてるようでした。芸人仲間からは「暗い」とからかわれることが多いものの、女性ファンからみれば、それって大きな魅力なのかもしれません。

まず「どんな時に句を思いつくのか?」という質問が出ましたが、「いつも何かしら感じているので」という返しに思わずシビレてしまいました。芸人の言うセリフじゃないって(笑)。

そんな思いの中からピースのネタも組み立てていくそうですが、中には「舞台に掛けてもこれは受けへんやろな」と思いつつ、どうにも可愛く思うフレーズがあり、それを表現するのに「自由律俳句」という形式が、しっくり来たとのこと。確かに、一つ一つの句は声に出して笑えなくても、脳内でニヤリとしてしまうものばかり。

確かに、お客さん全員が脳内で笑っても、舞台はスベったような感じになるんですよね。これって何とかならんものかと、筆者も長年年思ってたことでもあり、強く共感してしまいました。


収録されている句の中でいちばんのお気に入りは、という質問に対して挙げたのは

「こんな大人数なら来なかった」

という一句。誘われて仕方なく行ったら、結構人が集まっていて、これだったらわざわざ自分が顔出す必要なかったと思いながらも、帰るに帰れず最後までいるという姿を詠んだもの。誰もが共感できる名句だと思います。

ただ、最後に「相方の綾部さんからは、どんな感想が返ってきましたか?」という問いに対しては「基本的にアイツは字が読めませんから」と返し、芸人トークも十分できるトコを見せつけました。俳人・又吉直樹としての今後の活躍はもちろんですが、一見、噛みあわなさそうなピースの2人が作り出す絶妙な化学反応に、これからも期待大です。
プロフィール

hirokawa takaaki

「週刊テレビガイド」「TV Bros.」等の編集者として、客観的な目で見ることのできる立場からテレビと接する。 平成10年 フリーのライターとして独立。依然としてテレビ関係の記事、コラムを中心に活動。数年がかりの仕事として、日本テレビ50年史(非売品)の記事、コラムを共同執筆する。ミーハーさとマニアックさを合わせ持った目線で、ありとあらゆるバラエティを紹介していきます。

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