日本中の子供が「8時だョ!全員集合」に熱狂した理由の前に、長年にわたって、PTA団体からワースト番組に指定されてきた件について考えたいと思います。こういうことに限って、マスコミも積極的に取り上げてましたから(笑)。

ワースト、俗悪とした根拠は、食べ物を粗末にするギャグや下ネタが、子供たちに悪影響を与えるというもので、教育上の面からバッシングされました。しかし、いま考えると「全員集合」がPTAに糾弾された理由は、別のところにあった気がしてなりません。

PTAがもっとも不快に感じた点。それはコントの中で、終始一貫して学校教師と母親(つまりPTAですね)をからかい続けてきたことにあるのでは。しかし、子供たちが毎週目を輝かせて番組を見ていた理由も、同じくここにありました。

アニメや特撮などの子供番組には、往々にして「敵」が登場します。でもそれは、日本の支配をたくらむ独裁者や、地球侵略に燃える宇宙人など、子供の生活の中にはまったく登場しない存在です。唯一、生活観のある敵といえば、「ドラエもん」に出てくるジャイアンなどのガキ大将くらい?

しかし、子供たちにとっては、自分達の自由を奪い、圧倒的な力で頭から押さえつけてくる親や先生こそが「敵」でした。言うまでもないことですが、正しいのは親であり教師の側です。それでも子供にとって、大人はまさに「支配者」です。

しかも、子供世界にも流れる暗黙のルールで、親や先生のことを嫌う子は、「悪い子」の烙印を押されます。力も心も未熟な子供にとって、それは最大の脅威でした。この圧力に打ち勝てるほど成長した子供が、「反抗期」を迎えたと称されます。

「全員集合」のコントでは、いかりや長介扮する先生や母ちゃんが、憎々しげに怒鳴りちらし、加藤茶、志村けん等のメンバーを屈服させようとします。しかし、それをものともせず、カトケンは反抗したりバカにしたりと、抵抗を繰り返します。ここに日本全国の子供たちは、言葉にならない爽快感を味わいました。

こうした、番組上の方針について、ドリフターズおよび番組スタッフが強く意識していたのか? 関係者の執筆した「ドリフ本」には言及されていません。ただ、番組立ち上げ当時、社会現象にまでなっていた「ある作品」が、多大な影響を与えたと、筆者は強く確信しています。(と、思わせぶりに後編へと続きます)