俗悪番組だ、ワーストだとPTAから長年にわたって糾弾され続けてきた「8時だョ!全員集合」とドリフターズ。その根拠として、コントの中で食べ物を粗末にし、下ネタが多いこと等が挙げられました。

しかし、実のところは教師と親をコントの設定で笑いのめし、からかい続けてきたことが不愉快だったからでは。まったく同じ理由で、PTAから叩かれた作品が、永井豪作の漫画「ハレンチ学園」でした。

番組開始一年前に「週刊少年ジャンプ」誌上で連載がスタート。「スカートめくり」など少年誌としては描写が過激ということで、激しく抗議されましたが、ホンネとしては学生紛争の影響もあり、教師を徹底して悪役に描くことが、反社会的に感じられたのでしょう。

こうした騒ぎが「全員集合」立ち上げの際に、大きな影響を与えた可能性は少なくないはず。そこに子供達が目を輝かせて飛びついたのも、前例から見て当然の結果といえます。

「全員集合」の中で、かなり頻繁に演じられたのが学校コントでした。それ以外の時も、いかりや長介は大抵の場合、常に高圧的で口うるさい「支配者」役でした。悪役が憎々しいほど、ヒーローは輝きを増します。この構図を作り上げたことが、ドリフターズ最大の功績でした。

筆者も「全員集合」を毎週楽しみにしていた世代です。個人的な思い出で恐縮ですが、当時、ドリフのリーダーは「邪魔をする人」としか思ってませんでした。特に後半のコントで、いちばん盛り上がっている時に「やめなさい!」と言って、強制終了させることにムカついてました。もちろん、それが進行役の仕事なんですが(笑)。

全国の子供達は、いばり散らす長介に反感を持つ一方で、自然と他メンバーに強い共感を持ちます。誰もが「しむら~」と呼び捨てにしてたのは、紛れもなくその証しでした。そしてもう一つ、子供ならではの傾向が、決して「マンネリ」を嫌うことなく、逆にルーティンを楽しんでいたことでした。

それまで、テレビでブレイクした芸人にとっては、持ちネタが飽きられることが最も致命的な問題でした。しかしドリフターズ以降(先輩格のクレージーキャッツにも、ある程度見られましたが)は、繰り返しのネタが頻繁に演じられるようになりました。

これ以降現在まで、お笑い芸人は子供に受けることがブレイクの条件になったようです。ただ残念なことに、観客が飽きる前から、マンネリだの一発屋だのとレッテルを貼って、身内から足を引っ張るのは納得いきません。ドリフのように25年とは言わなくても、やりようによってはお約束ネタでも、もっと長持ちさせられるに違いないのですから。